満中陰 ~唯物と唯識の間で~

今日も、あなたの名作、風景の刺繍で飾ってみましたよ。

刺繍003風景

早いもので、今日は満中陰の法要を営む日となりました。

あなたが逝ってから昨日が六七日(むなのか)ですから、少し早いのですが、和尚さんもお忙しく、こちらの都合もありましたので今日にしましたよ。

昨日は、弥勒菩薩様にお会いした日でしたが、如何でしたか?
きっと、楽しくお話をされたのではないかと思います。
子どもの僕が言うのもおかしいのですが、仏に例えるなら、あなたはまさに弥勒菩薩でしたからね。

つい先日届いたお友達の手紙には、あなたが本当に純粋な人であったから、本当に好きだったと
書いておられました。
そして、もっともっといっぱい一緒に居たかったと偲ばれていましたよ。

この手紙をいただいて、改めて、あなたは人のために尽くしてきたのだとしみじみと思いました。
そして、人に尽くすために、普段の生活は本当に質素でした。
そして、自分で丹精込めて作った無農薬の野菜をも、たくさんの人に配っていましたね。

あなたに限らずあなたの兄弟姉妹は本当に純粋無垢でした。
昔気質と言えば昔気質なのでしょうが、それでも、これほど純粋で無欲で非打算的で且つ仲の良い兄弟姉妹は世間広しといえども無比でしょう。

その分、あなたたちの子ども=僕を含め僕の従兄弟たちは、大変だったのですよ。
しかし、形は変われども、この純粋さと一本気を誰もが受け継いでいると僕には見えます。

さて、葬儀の後にあまりにもお花が酷いといって、満中陰のお花をお友達の一人が手配してくれたので、 楽しみに待っていたのですが、残念ながら、かなり期待外れとなってしまいましたね。
僕は、お花を持ってこられた瞬間には、目が点になり、「しまった~」と後悔してしまいました。

ご好意とはいっても、こちらが代金を支払うのですから、思わず「持って帰って~」と言いたいところでした。

幸い、午前中に、あなたの好きだった姪姉妹からのお供えとして、素敵なお花が届いていましたし、 午後からは僕の嫁さんの実家からも素敵なお花が届きましたから、これで救われましたね。
お参り頂いた親戚の皆さんも、異口同音に「脇のお花があってよかったね」と・・・。

まぁ、あのチョイス、あの色彩感覚、あのアレンジメント・センスでは、いくら成金が幅を利かせるようになった芦屋でも、誰もお客にはなってくれないでしょうね。
芦屋と言わず、西宮・神戸ではちょっと受け入れられないかと思いましたね。

その地域では結構喜ばれているお花屋さんなのかもしれませんが、素人の僕が見ても、
ど素人が、何でもいいからただ並べて飾っただけみたいなやっつけ仕事的印象を受けました。

確かにボリューミィで(値段相当としては当然でしょうが)単価の高いお花を使ってはありますが、
何と言うのか、全く統一性がないんですね。

モチーフみたいなものが全く感じられないから、間の抜けただらしのない表情そのものなんですよ。
僕も、「あのお母さんの息子なのに、こんな趣味?」って思われたくありませんし、それ以前に自分のセンスとはかけ離れていましたから実に複雑な気持ちでした。

かつて、あなたがあなたの兄の法事への供花として選んだ生協さんに入っているお花屋さんでも、あなたが充分に納得するほどセンス良く飾ってくれましたものね。

それに、いかりスーパーのお花屋さんも綺麗ですし、林立する街のお花屋さんも、それぞれのカラーがあって、用途によって使い分けたいぐらいですからね。
全くのお任せで頼んでも、あのセンスで持ってくるお花屋さんは、この芦屋では皆無でしょうね!

三十五日に僕が入替のために頼んだお花も、どれだけ綺麗なことだったでしょうか!
ですから、今回のメインのお花は記念として写真にも残さないことにしました。
その代わりに、ご供花としていただいたお花の写真を残しておきますね。

いつものように、市内のお花屋で僕が頼んでいたなら、この2つを併せたボリュームとセンスが片側ずつ両サイドに飾られたはずなのですが・・・。

満中陰供花01
満中陰供花03
満中陰供花02

※画像をクリックしていただくと拡大画像がご覧いただけます!

本当の美しさや品は、やっぱり実物見ないと伝わりませんけれど・・・。

左側が、あなたの姪姉妹がお供えしてくれたお花
二楽園芦屋店パフィオ DE ニラクから届きました!)
右側が、僕の嫁さんの実家がお供えしてくれたお花(芦屋フローラから届きました!)

さて、供養膳は、僕らしく、定番の仕出屋さんから選ぶのをやめて、どの法事に行っても、僕がまだお目にかかったことのない西村屋 味の工房(本家:城之崎温泉)さんの『無月堂』にしてみました。

「ちょっとボリューム的にどうなのかな?」と心配しながらの注文でしたが、いやぁ、器の大きさの割りに中身がぎっしりで、量的にも充分という感じでしたね。

お味も品のあるうす味で、さすがに城之崎温泉の西村屋を彷彿とさせるものでした。
ただ、僕は神経を使っていたので、じっくりとは味わえていなかったので、それほど思わなかったのですが、「味が上品過ぎる」という感想もあったようです。

あなたの姪たちは、「季節感が抜群のお膳やね!」と喜んでくれましたが、確かに「うす味やね」とは言っていましたね。

僕は、あなたの食事作りで塩分控えめに慣れたせいで、あまり感じなかったのでしょうか?
うす味が好きなあなたでしたから、最高に気に入ったと思うのですが、料理を作っていた頃は、結構しっかりと味付けしてましたから、どう言ったのでしょうね?

思えば、娘のバレエの発表会の後には、駅ビル・モンテメールの「西村屋」さんで会食しましたね。
また、このサイトを手伝ってくれていたハーブさんを気に入って、誘ってお食事にも行きましたね。
気に入ると、「すぐに、何でもしてあげたくなる」のがあなたの悪い性分(笑)でした。

思い起こせば、阪神淡路大震災の後、どこだったかの招待で城崎温泉の西村屋さんに、あなたのお姉ちゃんと一緒に行けるように応募・手配したことがありますね。
あなたは、満足して嬉しそうに帰ってきたことを、昨日のように思い出します。

そういえば、被災当初、僕たちは子どもを連れて、豊中の嫁さんの知り合いのところにお風呂を貰いに行ったのですが、当時は、西宮北口まで歩かないと電車が通っていませんでしたから、あなたを
なかなかお風呂に連れていけませんでしたね。
それで、お風呂に入るために、有馬温泉まで車で何度か行ったことも思い出されてきました。

何はともあれ、あなたの四十九日の法要は、本日、無事に済ませることが出来ました。
正式な四十九日は、東日本大震災の四十九日からちょうど4週遅れの26日。
もう少しありますので、それまでは毎日、追善供養をさせてくださいね。

本来は唯物論者の僕が、こんなことを言っているのもおかしな話だと思うでしょうが、僕の中では
仏教と唯物論は何ら矛盾することなく共存しているのです。
あなたが少し心配していたような血も情も涙もない機械的な唯物論者ではありませんよ。

精神現象も全て物質現象として説明が付く日が来るだろうと確信されている分子生物学者のあの利根川進教授も、自分のことを「唯物論だけど唯心論」と語られているんですね。

「生物」大嫌いだった僕が、この立花隆さんとの対談の本「精神と物質」は、出版されてすぐに買ったのですが、読んだ最初から、この言葉には全然違和感がなく、自分の場合は、「唯物論だけど唯識論かな」って思ったことを覚えているんです。

それに、「生物」が大嫌いだったことも、あながちおかしくはなかったんだと正当化できたことと、何故、「生物」は細胞レベルが最小単位で、「原子」や「分子」という言葉が出てこないのだろうと疑問が解消できなかったことも覚えています。

とにかく、僕は覚えていなきゃ前に進まないことが多いと嫌になる特質があるから、どうも生物や
医学への興味は長続きしないからダメですね。
これが得意であったなら、もう少しあなたを楽に安心させてあげられたかもしれませんね。

僕は、中学3年の頃から「宗教」というものは嫌いなんですけれど、自分にとって「仏教」は宗教じゃないというのが一貫した認識なんですよ。

仏教は、何か特定なもの(神)を崇めたり奉ったりするのではなく、あくまで自分のあるべき姿を追求し模索し続ける姿そのものなんです。
ですから、僕にとっては「仏教」は完全に「哲学」であり、自分の監視官のようなものだと思っているんですよ。

ですから、四十九日の法要だって、それまでの毎日のお膳をはじめとする中陰供養だって、「追善」という意味だけではなく、僕とあなたとにあった相互関係から、あなたを偲び、自分を戒める期間という気持ちが強いんです。
自分に付きまとう業や煩悩の深さと向き合っている、そんな時間でもあったわけです。

そんな中で、情けなくも、ふと「魂というものは死後どうなってしまうのか?」というようなスゴロクのふりだし地点に最後は戻って来てしまうわけです。

人の精神というのは、電池で点いている豆電球の灯りのようなもの。
元のエネルギーが絶えたとき、やはり「無」となってしまうのだよな~!

実は、「輪廻転生」は、僕の中では今までもずっと切り捨てられたままなんです。

いよいよ、薬師如来様のご加護を受け、僕たちにとって仏となっていくあなた。
それでも、「願わくば 花の下にて 春会わん」
そんな思いを抱いている僕がここに居ます。

あなたの願い通りにはならなかった子どもでしたが、

僕はあなたの子どもに生まれたことを心から感謝しています。

親父や心やさしい兄弟姉妹と再会されているでしょうから、

どうぞ一緒に僕たちを暖かく見守ってくださいね。

あなたの刺繍の作品たちをまとめたギャラリーのページを作りたいと思っています。
僕の結婚式にも列席していただいたあなたの師は、若くしてパーキンソン病に侵されてしまわれましたが、今はどうされているのか?お伺いできないまま、あなたが病魔の餌食になってしまいました。

-2011年5月20日-


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